世界の棚田

世界の棚田について

世界の棚田は、モンスーン気候の東南アジア山岳地帯によく見られ、なかでも中国雲南省の大規模な棚田群、1995年にユネスコの世界遺産に選定されたフィリピン・ルソン島のコルディリェーラの棚田群、観光地として名高いバリ島のウブド近郊の棚田は特に有名です。ただ、東南アジアの棚田地帯は、紛争地帯と重なることもあり、その実態はまだよくわかっていません。確認されているところでは、イランのカスピ海沿い、アフリカ・マダガスカル島にも棚田があると言われています。

その中でも今回は、世界遺産にも登録されているフィリピン・ルソン島のコルディリェーラの棚田群について紹介したいと思います。

◆稲作の歴史

その前に稲作の歴史について述べておきます。稲作の起源は、かつては中国雲南省からインドのアッサム地方と言われていました。しかし、稲遺伝子研究の発展により、雲南起源説は否定され、長江中・下流域が稲作の起源地と見なされるようになりました。世界で最も古い稲作遺構は揚子(ようす)江(こう)下流域の江蘇省(こうそしょう)呉県(ごけん)の草鞋山(そうあいさん)遺跡(いせき)(約6000年前とされている)から発見されていることから、この地域からアジア各地に伝播したと言われています。また、大陸から遠く離れているフィリピンに稲作が伝わるには南方のインドネシア島経由以外は難しいと思われているので、かなり遅くに伝わったと言われています。日本の稲作はアジアで最後発と言われていますが、それでも2500~2600年前の水田遺跡(福岡県菜畑遺跡)が発見されているので、フィリピンも同程度の稲作の歴史があると考えられます。

◆コルディリェーラ棚田群

コルディリェーラ棚田群はルソン島中部の標高1000メートルから1500メートル、約10000平方キロメートルの山岳地帯に散在していますが、最も規模が大きいのがバナウエの棚田です。日本の棚田と比べても、バナウエの棚田は桁違いに規模が大きく、しばしば「世界八大不思議」や「天国への階段」とも呼ばれています。あぜ道が細く急勾配なため、農機具の導入は難しく、ほとんどが手作業で行われています。この大規模な棚田は、約2000年をかけてここに住む民族、イフガオ族によって作られました。

ここバナウエでは2種類の米が栽培されています。1つは東南アジアで広く栽培されている熱帯ジャポニカで、もう1つは赤米であり、日本で古代米と呼ばれている古い品種です。日本では収穫した稲を乾燥させるために、外に出して干しますが、通り雨がいつ来るかもしれないバナウエでは必ず自宅に運び入れなければなりません。イフガオ族の伝統的家屋は左のように高床式です。最近はこのような家屋はごくわずかしか残っていませんが、アジアの熱帯から暖温帯の湿潤地帯に共通してみられるものであり、収穫した米を保存するだけでなく住居としても用いられています。

◆コルディリェーラ棚田群の現状

近年では、若い世代は労働のきつい農耕を好まず、棚田の景観がもたらす観光産業に目が向きがちであり、その結果として、棚田の補修が労働力不足で思うようにいかず、棚田の荒廃を招いています。
このことを踏まえ、2001年にユネスコの世界遺産の危機遺産へも登録されています。

 

*引用文献として以下を利用させていただきました。
NPO法人 棚田ネットワーク http://www.tanada.or.jp/
フィリピンの旅-Province of Ifugao(イフガオ州)http://ria7phnao.com/page_1740.html
世界遺産バナウエの棚田から学ぶことhttp://www2.odn.ne.jp/had26900/topics_&_items2/Ifgao_riceterrace.htm
稲作の起源と「米」の語源http://homepage2.nifty.com/whoseng/ancient/komes-origin-and-etymology.html


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