分布

棚田の分布

棚田は全国に221,067 haあり、埼玉、東京、沖縄を除けば全国的に存在しています。このうち面積一位は新潟(23,366 ha)、二位は岡山(13,558 ha)、三位は長野(12,575 ha)となっています。新潟県の頸城丘陵、岡山県の吉備高原、大分県の阿蘇・九重火山山麓などが有数の卓越地となっています。

棚田は西南日本(富山―岐阜―愛知以南)に約2/3の144,812 haが集中しています。分布が西南日本に偏る理由の一つに西南日本と東北日本における地域配置と水田の歴史の違いが考えられています。

日本の稲作は最初に北九州ではじめられ、弥生時代に本州北端まで伝わっていきました。しかし、その後の発展は地形の特徴から西南日本と東北日本で違いが見られるようになりました。西南日本では小規模な沖積平野が多いのに対して、東北日本では大規模な平野が多く存在します。古代、中世の水田の開発は小さな河川の盆地や平野を中心に行われていました。このため西南日本では開発が進んだのに対し、東北日本では停滞がみられました。

棚田は傾斜地に開かれたものですが、急な山地には少なく、火山山麓や第三紀層丘陵など緩やかな斜面に卓越しています。さらに細かく見ると、棚田は地すべり地に多く分布しています。地すべりによってつくりだされた保水性に富む緩斜地が棚田に選ばれ、その土地を人の力で造成してきたため、このような分布になりました。

棚田の形態は傾斜によって左右されます。棚田は緩やかな傾斜地にひらかれている場合、一区画の面積は大きく、10~20 a 区画のものも見られます。これに対して急な傾斜地にひらかれている棚田は、一区画の面積が1 a 以下の田が多いです。千枚田と呼ばれる石川県輪島市白米、長野県更植市姥捨の棚田は後者に属します。これらは面積的には少ないですが、景観の美しさから人の目を引いてきました。農林水産省が選定する日本の棚田百選にはこのような土地が選ばれています。これらの急斜地にひらかれた棚田は全棚田面積221,067 ha のうちの13.3 % にあたる29,459 ha です。このうち4/5は西南日本に集中しています。

 

主な棚田卓越地域
岩手・宮城県境の千厩高原 棚田の卓越地域
新潟県佐渡島の海岸段丘と頸城丘陵
岐阜県東南部の東濃丘陵
岡山県の吉備高原
高知県東部の四国山地
大分県の阿蘇、九重火山山麓
奈良県の奈良盆地周縁の丘陵・山地
兵庫県の北淡路丘陵
徳島県の阿讃山地

 

参考文献:中島峰広,『日本の棚田―保全への取組み』,古今書院,1999

 


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