梅雨に入り、ちょうど梅の収穫をしました。菊池です。
田植え2日目は無事に終了し、全ての田んぼに苗を植えることができました。以上きく……と、終わるわけにもいかないので、おまけを付けておきます。気が向いたら読んでみて下さい。
*****
私はオリザ、オリザ・サティバという。今は狭い空間に3人で押し合いながら暮らしている。だが、ついこの前まではもっとすし詰めの所で生きていた。なぜそんな場所にいたかはわからない。物心が付いた時には満員電車に乗っていた。
私は、吹き抜ける風に心地よく身体を揺らす。同居人も同じように動く。しかし、彼らは私と違って本能のままに生きている。だから、人混みの息苦しさや広い大地の解放感を感じない。彼らもきっとオリザなのだ。私にはわかる。周りには私達と同じように数人で身を寄せ合うオリザが何組もいる。
どうして――なぜ身を寄せ合う? なぜ根を切られる? なぜ水の張った土に植えられる? 何のために生きるのか――。
人間は楽しそうに私達の根を切り、3人まとめて土に埋めた。彼らは何の目的でこんなことをしているのだろうか? きっと私達は利用され、彼らの利益となるのだろう。
――私は答えが出ないと知りながら、考えることをやめられなかった。
ある日、また人間が入ってきた。私達の周りのオリザ以外の草を抜いているようだった。
すると、近くに土の色に同化した植物であっただろうものが浮いてきた。体の上部は切り取られ、腐りかけている様子だった。
「考えるのはやめなさい」
「……あんた、話せるのか?」
その声を感じた時には少し驚いたが、発信源は容易に想像が付いた。
「お前は不幸だ。考えずにはいられないだろう」
確かに、私は常に考えている。それ以外にできることが無いのだから、当然のことだ。しかし、それは彼とて同じことではないか?
「……誰だ?」
「私は、オリザ。1年後のお前だ。私はもうすぐ死ぬが、お前に教えておいてやる。――他のオリザと同じように生きろ。知性なんて捨ててしまえ。そうすれば、きっと楽になる――」
彼はそう言って朽ち果てた。そのうち、戻ってきた人間に踏まれ、地中に沈んでいった――。
「あんたは考えることをやめられなかったのか……」
私は悟った。私がいくらあがこうと、この世界から逃げ出すことはできない。そして、このままでは彼のように後悔しながら死んでいく。
決めた。考えるのをやめよう――。
――あれからどれくらいの時間が経ったのだろう。私はどんどん根を張り、吸い取った栄養でぐんぐん葉を伸ばしていた。
今、私の葉は虫に喰われている。その勢いは留まらず、全て喰い尽くされてしまうかもしれない。
だが、痛くない。苦しくない。
だって、私はとっくに『死んだ』のだから。
*****
最後までお読みいただき誠にありがとうございます。以上、菊池でした。